若い頃に勤めていた会社が西麻布にあり、すぐ近くに美味しい焼き鳥屋があった。ビルの地下にあり、10名程度のカウンター席と4人掛けのテーブル席が3つだけの小さな店だが、いつも繁盛していて予約なしでは入れないことも多かった。職人気質で無口な主人と品が良く客の評判が良い奥さんがやっており、他に手伝いの女の子が一人いた。小奇麗な店内はいつも清潔で、近くにある企業がビジネスで利用することもある高級な店だった。
バブルによる好景気が続いていた頃、私はこの店を週に2回から3回、5年間くらい利用していた。
いわば馴染みのお得意さんになっていた。会社の仲間で行ったり顧客の接待に利用することもあったが、仕事が終わった遅い時間に一人で行くことも多かった。そこはお客がいる限り深夜1時頃までやっていて、帰りは神奈川の自宅までタクシーということも稀ではなかった。もともと焼き鳥が好きなことに加え、その店が気に入っていたからだが、いま思えば古きよき時代とは言えずいぶんお金を使ったものだ。
この店での私の飲むパターンは決まっていた。
まず、冷たい生ビールを大きめのグラスに一杯だけ、あとは焼酎のお湯割りで、銘柄は鹿児島産の特定の米焼酎と決めていた。最初はお湯6に焼酎4を加えるが、そのうちに5対5になり、中程度の湯のみ4杯から5杯で終了する。このお湯割りが焼き鳥と実に良く合う。砂肝・もつ・つくねを注文することが多いのであるが、焼酎が焼き鳥の味を引き立て、焼き鳥が焼酎の味わいをより深いものにしてくれる。